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春山に入る前に 登山の危険性と社会的責任

5月連休は多くの人が、山に入られる時です。その分、事故も多い時です。
街は春うららでも、山はまだまだ雪が一杯です。雪山での事故は、重大事故につながります。昨年の5月連休にも大阪労山会員が中央アルプス・空木岳からの下山途中に滑落して亡くなっています。また、12月には、穂高岳で兵庫労山会員1名が死亡し、2名が未だ行方不明になっています。
重大事故は雪山に限りません。昨夏の北海道トムラウシでの事故は衝撃的でした。その他にも、報道されていない重大事故がたくさん起こっています。
雪山であるのか雪の無い山であるのか、岩登りかハイキングか、ツアー登山か個人登山か、インドアかアウトドアか、山の会に入っているかいないか…ジャンルや登山の形態を問わず、山の事故は増加傾向にあります。
多くの人が楽しみで山に入りながら、悲しい姿で、あるいは命を落とさないまでも本人は痛い、辛い思いをして山を下り、長期の治療や入院でなかなか日常生活や社会に復帰できないというのが山岳事故の現状です。
登山は手軽に楽しめるスポーツですが、危険なスポーツでもあります。山に入られる皆さんは当然、そのことは自覚されているでしょうが、「気軽」「楽しむ」に目を奪われ、「危険」に目が届かなくなってはいないでしょうか?
また、登山は一人でも楽しめるスポーツではありますが、事故の陰には、家族や友人や同僚、あるいは地域の人々など、たくさんの人を悲しませるスポーツでもあります。救援者を危険に巻き込むおそれもあります。登山は「社会的責任」のあるスポーツです。山に登る人はそのことも自覚しなければなりません。
計画を立てるにあたって、今一度、「危険」と「社会的責任」を思い出して下さい。
具体的には、どうすればいいのでしょう?

@ ルートや天候の情報を集め、登山をシミュレート(予習)する。
A 必要な装備と体力、技術を備える。
B 事故は起こりうるものだと自覚する。

この3点に集約されるのではないでしょうか?いずれも、基本的なことです。うららかな春日和と長期の休暇は、このことを忘れさせます。今一度、「危険」と「社会的責任」を思い出して、春山を楽しみましょう。
大阪府勤労者山岳連盟事務局長・カランクルン 林 孝治


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