ハイキングレスキュー交流会の報告
ハイキングレスキュー交流会が10月3日に大阪労山事務所で開かれました。これまで6回積み重ねてきた事故対策会議の議論が、結果的に登攀や沢登りの事故が対象となりやすいことから、ハイキング愛好家から用語を含め分かりにくいとの指摘があり、これを踏まえハイキングを主題に交流会という形で開きました。
出席者は23名で泉州労山の日高さんと中俣さん、そして高槻労山の三宅さんから心構えや経験談を話してもらいました。
日高さんからは、@スリング3本(1本は120cm程度の幅広テープで簡易ハーネスにできるもの)、Aカラビナ3枚、B補助ロープ7~8ミリを10m(CLはできれば20m)Cツエルト、を山行時にお助け4点セットとして持っていく。これに自分はのこぎり、針金、皮の手袋、11mの細いロープ(ロープの回収用の紐として使用)を持っていく。また、ツエルトはたまには点検が必要との言葉を添えて説明がありました。
三宅さんからは
南アルプスの鋸岳でパーティーの1人が転落した事故で転落地点まで降りていき転落者の安全を確保したが、後数メートル下が絶壁で危機一髪の場所であった。ヘリの救助を受けたが、簡易ハーネスではヘリ吊り上げはダメだと言われ、転落者へのハーネス装着に苦労し、補助ロープの芯部分がよじれ使いにくかった。補助ロープのよじれが会場で再現披露された。また、転落者はなぜ自分がそこにいるのか全く分からず意識が飛んだ状態であった。との報告があった。
続いて仲俣さんからは白山山系で右足首捻挫したことについて
歩きやすい道で左足を踏み外しそのため右足で踏ん張った結果、具ねって捻挫した。登山道が狭く休憩する場所がなかったのが辛かった。雪渓で冷やし診療所でテーピングの治療を受ける。荷物は他のメンバーに持ってもらい、ストックを頼りに下山する。怪我したときの状況は分からない。との話があった。
これらの説明、報告の後日高さんに
1.袋にロープをそのまま入れてもつれないか
2.お助けセットの重量はどの程度か
3.これらを使いこなすための訓練どのようにしているのか
4・組織や体制はできているのか
等の質問がありました。これに対し日高さんからは
1 袋にロープを入れながら説明され、末端を袋の口から少し出しておくだけで容易に利用できることを実行しながら説明されました。
2・重量は0.8~0.9kg程度である
3・クライミングではなく、初級の岩トレの時やハイキングの途中で行う。また、毎月第1水曜日にある集会でワンポイントレッスンとしてやつている。
4.担当部として教育訓練部があるとのことでした。
その後以下のような意見や感想が出されました。
補助ロープと登攀ロープは違うと言うことを初めて知った。また、負傷した経験がある参加者からは、怪我の状況は覚えていないという発言や、別の参加者からは、こけたらどうする、どうなると思いながら歩いている。意識が飛んだ状態で歩いている。個々のメンバーについていつもと違うなというようなお互いがチェックし合えるパーティーでなければ、という意見も出されました。
また、行き先によっては補助ポープでよいが、補助ポープでは当てにならないとの意見、意識が飛んだ負傷者の救助談、ピンチバック(救急用品)を携帯しているとの意見もあった。更にツエルトビバークの訓練を始めレスキューは反復継続した訓練が必要との意見も出された。
最後には参加者全員に意見や感想を求めた。その中にはヒヤリハットの件数をトレーニングによって減らせるとの意見や、無理をせずに携帯電話を利用するなどして救助を求めるのが賢明であるとの意見も出た。登山、ハイキングは自己責任からと考えるなら、当然セルフレスキューへの取組みはその範疇であると思うが、生兵法は怪我の元との例えがあるとおり、しっかりとした知識や技術を身につけておかなければかえって大事に至る。そのためには反復継続した訓練は重要である。
ハイキング向けの交流会であったが、レスキューの具体例に話が及ぶとやはりロープワークやそのための専門的用語が出てきてしまう。山行傾向の異なる会員には理解しにくい部分もあったと思うが、このような場合主催者側において注釈的な説明を入れていくことも今後は必要であろう。
この交流会が安全意識の向上と何よりも安全登山に貢献できればと願っています。
参加していただいた皆さん、とりわけ報告していただいた、日高さん、三宅さん、そして中俣さんに深くお礼申し上げます。
常任理事(教育遭対)徳野 暢男