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第48回 大阪府勤労者山岳連盟総会挨拶
       会長・きたろうHC 園 敏雄

先ず初めに09年度山行中の事故で亡くなられた「大阪ぽっぽ会」、「ふれんず」の会員のお二人に哀悼の意を表します。登山時報や全国連盟の労山ニュースでご存知の事と思いますが、昨年1月〜5月の間に11名の死亡・行方不明者を出すという事態を受け、全国連盟から非常事態宣言が出されました。その後も重大事故が相次ぎ、一年間で19名もの死亡・行方不明者が出、大阪労山がその一割を占めるという、まさに安全で楽しい山登りを希求する労山の、存亡の危機といわれかねない状況にあると言える1年ではなかったでしょうか。この間にも7月、トムラウシにてツアー登山の参加者、ガイドが8名も遭難死亡するというショッキングな事故が有りました。先日、神戸で開かれた「トムラウシ遭難事故を考える」シンポジウムでは、ツアー旅行社、ガイド、ツアー登山参加者のそれぞれの詳細な行動の分析と、在り方について、生還されたツアー参加者や各界から報告がされ、討論されましたが、この事例と同様の事故が発生しないように、各会でもリーダーシップ、メンバーシップ、事前のトレーニングや安全な登山に対する心構えなどが出来ているのか、今一度考え議論していただきたいと思います。

     次に昨年度、大阪府連では会員数の減少を留め、財政基盤を健全化するために多くの登山愛好者に労山への加盟を呼びかけようとアタックプランを策定し、三年計画で最高の峰1731名を目指そうと活動してきました。皆さんの協力を得、お蔭さまで初年度の目標を上回る81名の会員増を果たす事が出来ました。一時1000万人といわれた登山人口も最近の分析では5〜600万人と言われていますが、ツアー登山に参加されている方の多くが、登山の事故は自己責任という姿勢でない事はトムラウシの事故を見ても明らかです。登山は健康維持のスポーツであると同時に、一歩間違えば大きな事故に繋がるスポーツである事を自覚できるよう、これらの組織されていない登山愛好者の方に正しい山登りの知識を学んでもらい、連れて行ってもらう山登りではなく自ら計画できる力をつけられるよう、労山への加盟を訴えていきましょう。私達もいつまでも仲良しクラブでは、外からはなかなか溶け込みにくいものです。大きく手を広げて新しい仲間を迎え入れましょう。

     最後に 「登山時報」 3月号シグナルで、全国連盟斉藤理事長が、「人間が人間として生きられる社会に」 と題して、現在の日本社会の貧困な雇用政策、社会福祉政策などの現状を分析し、大企業や政治の責任を問うています。平和であり、豊かな生活の基礎が有ってこそ登山ができるのです。年収200万円以下の労働者が一千万人を超えるという中に、多くの若者がいます。人が人としての尊厳を尊重される 当たり前の社会にしていく国民自身の努力無くして、登山文化の発展もあり得ないと結ばれていますが、私もそのように思います。大阪労山では登山者九条の会や平和大行進、自然保護分野などで社会に目を向けた活動を続けていますが、さらに、会員や周りの登山者を含めた方々が置かれている社会的状況にも目を向けた活動が拡がるようお願いして、総会の挨拶とさせて頂きます。
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