第7回事故対策会議報告
教育遭対部長 中川和道 20140304
第7回事故対策会議が2014年3月4日(火)19時〜21時,労山大阪府連事務所にて開催され,14の会から26名が出席し,大阪労山ニュース2月号の事故一覧に掲載されたNo.9〜15の事故について討論した.
最初に園敏男理事長から「事故件数の年度別集計数は減っているものの2013年度は死亡事故が1件起きてしまった.第7回となった事故対策会議などを通じていっそう安全登山につとめたい」とのあいさつがあった.そのあと司会の中川から「事故対策会議は,事故の当事者や当事者に近い責任者が一堂に会して経験を語り合い教訓を探し合うことによって事故を減らしていく会合.事故当事者の不明や欠点を攻撃する吊るし上げ的な会議ではなく,同じ場面に自分が立った時,事故を避ける判断の分岐点がどこにあったのかを学びあう会議にすべく運営しよう.」との趣旨説明があった.
なお,過去の第1回から第6回の 事故対策会議の記録は,第1回(2011/3/5)、第2回(2011/11/8)、第3回(2012/2/29),第4回(2012/5/28),第5回(2013/2/27)のまとめは「大阪労山ニュース」2011年4月号、2011年12月号、2012年4月号、2012年7月号,2013年5月号、2013年11月号に掲載されており,大阪労山のホームページからhttp://www.geocities.co.jp/Athlete/ 3063/kikanshi.htm へとたどると読むことができる.
当日は関係の各会から当事者責任者を含め2名くらい参加いただき、上記「事故一覧」から9,11,12,15について,それぞれレジメや各会での事故総括文書を30部準備して1件15−20分の報告のあと議論を行った。以下,討論の概略を述べる.
No.9 2013年 10月6日12時30分頃HN(女性)55才 きたろうハイキングクラブ.
会からは4ページの事故報告書が配布された.当日の天候は晴れ.岩はよく乾いていた.播州前之荘七種本槍から下山中20m程の緩斜面を下り1.5m位の急斜面の下にある登山道に向かって,当人は急斜面を斜面前向きにゆっくり下っており,あと30-50cm程で登山道(50-90cm幅)に達する地点から下の登山道に飛ぶように着地したがバランスを崩し,スローモーション映画のように体が谷側へ傾き,登山道直下の切り立った谷に転落.12:30事故発生後,谷に下りで状況を確認したが脈なし.12:37には警察に救助要請.13:37ヘリ到着.救助隊員1名が下降し収容.姫路赤十字病院へ搬送.外傷性ショック死と診断.
事前の体調チェックでは不調の申告は特になし.岩場にかかるさいは不安な人に申告してもらい個別サポーターをつけて行動したが当人からは不安申告はなかった.転落の瞬間の目撃者はおらず直接の事故原因(つまづきか,ザックのひっかかりか,めまいかなど)は不明.事故検証委員会を6回開催し検証山行も実施.再発防止策としては,教育の充実,参加者による事前の下調べの奨励などを考えている.
議論では,危険に備えて技量の高い人が先に下っておき登山道で備えるなどはできなかったのか,後ろ向きで下りるべきではなかったのかとの発言があった.同行した数人からは,当日もっと技術レベルが高い箇所を複数すでに無事通過してきており,この場所はそれらよりレベルが低いのでそれらの対策を講じる必要がなかったとの報告であった.検討の価値がありそうだった唯一の議論は,「スローモーション映画のように落ちたとの報告からは,ひざや体が伸びきった状態で,棒立ちのまま倒れて行った状況のようだ.歩道橋や地下鉄の階段などで立ちくらみや足が滑ったときなどに備える意味でも,『まずひざを曲げる,しゃがむ』訓練を日ごろからやっておく必要があるのではないか?」という指摘であった.今後の検討が望まれる.
No. 11 2013年11月16日15時30分頃YH(女性)68才きたろうハイキングクラブ
六甲山保久良神社境内
六甲横池周辺での読図教室を終え,保久良神社まで下山した時,1頭のいのししが近づいてきておしりを噛まれ,激痛.大阪府の医療センターで治療継続中.咬まれた箇所のズボンが破れていなかったので油断していたが,医者に「狂犬病なら24時間以内に,破傷風なら2日以内に注射が必要」と言われ,甘く見てはいけないと実感.咬まれてすぐと,半年後,1年後と注射の日程が組まれている.特別基金の申請は治療終了後に,と言っていては時期を逸するので今の時点で申請した.
討論では,ねずみやその他の動物に咬まれた経験が出され,動物の咬み傷を甘くみてはいけないとの点で出席者一同,学びあった.
No. 12 2013年11月17日12時20分 AT(女性)57 くすのき山遊会
金剛山系槇尾山
五川辻を経て下山途中,左側が切落ちている登山道で小石に滑って転倒.その際に右足に違和感(痛み).三角巾で固定して約1時間20分下山.翌朝通院.17年前にネンザとされた右足首の後突起の骨折をその際見過ごしていたことが判明.その悪化で全治3週間.右足首後突起骨折.当人からの問題提起は「ネンザと言われても後突起の骨折を疑い,医師に再診を伝えるとよい.医師もこれは見過ごしやすい事例だと言っている」とのこと.また,同行パーティー9名の誰もが救急セットを持っておらず事故者自身が骨折部位を固定した.これが反省点となった.さらに,自力下山か搬出か,判断が難しい点もあったという.
議論では,眠っていた古傷が高い山などで急に悪化されてはたまらない,どうすればいいのだろうかなどの声が出され,「ネンザと言われても後突起の骨折を疑い,医師に再診を伝える」,「古傷を甘く見ない」という教訓が共有された.
No. 15 2014年1月5日14時00分頃 RT(女性)59才 女性ハイキングクラブハイジ 金剛山
念仏阪を七分通り下ったところ
金剛山からの下り.伏見峠から念仏坂に雪がついていた.アイゼンをつけて下り,七分通り下山.ほとんど雪がなくなりアイゼンが舗装に当たり始めたためアイゼンをはずした.少し下ったところで氷がまた出てきて転倒.足をひきずりながら自力で下山.翌日病院にて左足関節の外踝(くるぶし)の骨折(左関節外踝骨骨折)と診断されギブス.事故当事者が振り返ったところでは,樹林帯で日差しがなくアイスバーンが分かりにくかったこと,あと少しで下山完了との安心感から注意力が散漫になっていたとの分析がなされた.
討論では,「あと少し」が絵に描いたような事故のパターンだ,との意見が出た.自分ひとりでは緊張を保てないこともあるので,そんな時こそ,パーティーの皆が互いに注意を喚起するよう声をかけあうことが大切だ,との議論がなされた.
今回の第7回事故対策会議では,火急の用事ができたためNo. 10,13,14の3件の事故が報告に至らなかった.そこで,お久しぶりに参加者全員に一言ずつ発言してもらった.実際に聞いてみないと分からないと思った,訓練の必要性を痛感した,事故対策会議のまとめをするとよい,など有意義な発言が多かった.
参加者26 きたろうハイキングクラブ3,豊中労山3,ハイジ3,救助隊2,モンテス2,カランクルン1,泉州労山1,大阪ぽっぽ会1,大阪志峰会1,吹田労山1,ハイキングクラブELF1,常任7,